5月12日~14日、鹿児島県の奄美大島に地域メディアの調査に行ってきました。奄美大島は、2つの地域新聞と3つのコミュニティ放送(FM)がある、地域メディアの盛んな地域です。今年3月に初めて奄美大島に伺って調査を行ったのですが、その中で、コミュニティ放送のある宇検村という人口1600人の村で、今後の地域メディアのあり方について考える勉強会を実施したい、ということで、5月13日、再び宇検村を訪ねました。NPOエフエムうけんの主催で、NPO社員、パーソナリティのボランティアの皆さん、宇検村役場の人たちが参加し、私からは、コミュニティ放送の現状や、経営が厳しく閉局が続いている国内とは異なり、むしろ今、コミュニティ放送の開局が加速している海外の事例などを報告しました。その上で、エフエムうけんの今後、村の情報伝達やメディア機能の今後について、白熱した議論が行われました。

宇検村でコミュニティ放送が開局したのは2010年です。放送局の施設やインフラは村が整備するという「公設民営型」の全国第一号でした。東日本大震災後、行政の防災行政無線の一部機能をコミュニティ放送が担うケースは増えてきていますが、宇検村はまさにその先駆け的存在です。
また、コミュニティ放送は免許を受ける際、番組編成の中で、地域に密着した自社による番組制作が50%以上あるということが努力目標となっています。1600人しかいない宇検村でなかなかそこまでは難しい、ということで、県域民放のMBCラジオとミューエフエム、そして、同じ奄美大島のあまみエフエム(ディ!ウェイヴ 77.7MHz)、FMたつごうの放送とも連携して編成を行っています。
もともと宇検村は、県域ラジオの難聴地域でもありました。そのため、コミュニティ放送に県域放送の一部を再放送するというこの方法は、県域局にとっても宇検村にとってもWIN-WINのモデルとなっています。局と局の間はVPNでつないでいます。

FMうけんの番組は非常に興味深いものが多いので、こちらについては改めて論考にしますが、1つだけ紹介しておきます。「1時間目 島ゆむた」です。島ゆむた、とは奄美大島の方言のこと。第一、第三水曜日に、86歳の元学校の先生が先生役になり、村の若いパーソナリティが宇検村の昔のことばを学ぶ番組です。番組では、パーソナリティがあらかじめ現代語の寸劇を用意し、それを先生が方言に翻訳しながら学んでいきます。奄美大島では、方言が学校や家庭で使われることが禁じられる時期もあったということで、使える人が少なくなる中、地域のアイデンティティとして残していこうという取り組みです。開局以来15年間続いている長寿番組で、先生の手書きによる方言辞典もありました。
収録に立ち会わせていただきましたが、良く練られた寸劇をもとに小気味よいかけあいが面白く、そして何より、元先生らしい、時に厳しく時に温かい指導が心に残りました。島ゆむたは奄美初心者の私には全く歯が立ちませんでした。たとえば、「ごきぶり」は「くゥんにゃと」というのだそう・・・・。でも、せっかく奄美大島と関わりを持てるようになったので、少しずつ学んで、次回奄美に伺う時には、挨拶くらいはできるようになりたいと思います。

エフエムうけんが、他のコミュニティ放送と比べて最も特徴的だと感じたのは、敷居の低さと開かれた運営です。多くの町役場の職員たちが無償パーソナリティとして参加していることにはとても驚きました。また、宇検村はとても移住者の多い地域だそうで、地域おこし協力隊として来村した人の多くが、隊を終えてからもそのまま住み続けているといいます。そうした人たちも積極的にパーソナリティとして参加していました。宇検村にもともとあった、互助的で開かれたコミュニティの雰囲気が、ラジオというメディアを介して更に高まっていると感じられる、心地いい空間が村中に広がっており、これまでも、多くのメディア研究者が宇検村を訪れていた理由がわかりました。

そんなエフエムうけんですが、開局から15年をすぎ、まもなく放送インフラの更新時期を迎えることになっています。災害情報伝達としてラジオというメディアの相対的価値が低くなっていること、NPOとしての持続可能な経営のために行政からの資金以外の財源を考えて行くことなどが課題となっています。勉強会では、様々な意見が出されました。この意見も踏まえて、宇検村として議論が進んでいくとのことです。

勉強会の様子やうけんエフエムの今後については、また改めて書いていきたいと思います。地域にメディアがあることの価値と意義を改めて感じさせてもらった素晴らしい時間でした。
