東京財団論考「人口減少社会における地域メディアの現在地②民放ローカル局の再編・統合は?」(4月24日)


総務省の「デジタル時代における放送制度の在り方に関する検討会」で取りまとめ案が公表されました。そこでは、これまでは認められてこなかった「1局2波」(1つの県内で1つの地上放送局が2つの波(チャンネル)を運営する)が認められる方向性が打ち出され、新聞紙上でも最近、頻繁にとりあげられています。

本論考では、「1局2波」を巡るこれまでの議論について整理するとともに、なぜ、他業種で進む再編・統合が放送業界では進められてこなかったのか、行政(金融庁)主導で積極的に再編・統合が進められている地方銀行とも比べながら論じています。

【論考】人口減少社会における地域メディアの現在地 ②民放ローカル局の再編・統合は? | 研究プログラム | 東京財団

論考の中で最も私が伝えたかったことを下記に一部、引用しておきます。

③業界再編や統合は必要なのか?
筆者はこれまで、多くの経営主体が異なる局が存在すること(多元性)によって、多くの情報や文化、考え方などが提供され(多様性)、地域に密着したサービスが実現されている(地域性)と考えてきた。実際に現地に足を運ぶと、どんなに規模が小さいローカル局であっても、経営が厳しい局であっても、個社として歩んできた歴史があり、日々の営みへの努力があり、地域に局が存在していることの価値が感じられる。筆者は、基幹放送普及計画という放送政策に従い、もともと人口が少ない県であったにも関わらず、ローカルテレビ局を4局開設した地域の局が、結果として経営環境が厳しい状況に陥っていることに対して、それを全て局の責任として背負わすような議論には組したくないという立場である。

ただ、筆者の問題意識はあくまでも地域メディア機能の維持であり、ローカル局という組織の維持にあるわけではない。今後、多くの地域が更なる人口減少とマーケットの縮小に直面していく中で、また、配信サービスやデジタルプラットフォームの浸透、AIサービスの急速な台頭というメディア環境変化の中で、これまでのようなローカル局のあり方のままで生存し続けていくことは困難である。こうした中、変化に向き合わず、組織を維持することが目的化してしまうような経営を行う局も出かねない。こうした局に対するアプローチは非常に難しい。

今回の議論では、変化に柔軟に対応しながら、地域で更なる役割を果たすローカル局の経営のあり方を、「地域性指標」というものさしを用いることで道筋を作っていけないか、という議論が試みられた。しかし、誰が何のためにこの指標を用いるのかが見えないまま議論が始まった印象があり、結局立ち消えとなってしまった。本稿で地方銀行の事例を出すのは3度目であるが、銀行では、健全性の基準として、総資本のうち純資産(新株予約権を除く)の占める割合である自己資本比率が4%以上という指標が示されている。逆に4%を下回った場合には、再編・統合を促す施策がとられてきたのである。在り方検の議論では、これに類するような指標がイメージされていたのかもしれないが、メディア企業に対しては、行政側から何らかの指標を定め、それを基に判断が下されていくことについては慎重であるべきであろう。とはいえ、行政と業界は敵対するのではなく、あるべき未来の姿に向けて知恵を出し合いながら、視聴者や社会も巻き込んだコミュニケーションを重ね、ありようを考え続けることはこれまで以上に重要になるだろう。

また、地域メディアとして経営していくことが難しい状態に陥った(陥るおそれのある)局に対して、再編・統合を促していくような腹を割ったコミュニケーションが、系列単位、地域単位でどこまでできるのかも重要になってくる。コミュニケーションを持ちかける側の大義も大きく問われることになるだろうが、こうした厳しい局面を避けて通れないタイミングは、そう遠くないうちに訪れる。今回の1局2波も含めて、多様なマス排緩和の施策は準備された。“守り”から“攻め”にブリッジをかけ、実効性のある形で活用していくのは放送局自身なのであろう。