民放オンラインの連載も6回目になりました。今回も引き続き、総務省の検討会で行われているローカル局を巡る議論について整理しました。https://minpo.online/article/post-666.html
系列ローカル局では収入の多角化がなかなか進んでいない現状や、自社制作番組の展開状況、そして後半では、今回、総務省がローカル局に対して行った同時配信などに関する意向アンケートの位置づけに対する違和感についても書いています。違和感の部分について、こちらに転記しておきます。
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総務省事務局からは、「今後のネット配信に係る展望」「ネット配信によって放送を補完または代替することの是非や要件」に関する事業者のコメントが紹介された。この質問は、2025年8月25日の在り方検親会36回会合に提出された「今後の検討の方向性」に従って行われたものと思われる(図4)。

<総務省・在り方検第36回会合資料>
現在、ラジオについては、AM事業者が中継局を廃止してFMに移行するにあたって発生する難聴地域について、代替的手段としてradikoの活用が要望されている。また、今回の会合ではエフエム東京が、FM事業者も中継局を廃止する際にradikoを代替として認めることを要望した(説明資料はこちら)。radiko代替については、災害対応の観点から筆者は消極的な意見を持っているが、一旦それは脇におくとして、radikoは、全ての地上ラジオ放送事業者が地域制御する形で”常時”同時配信を無料で提供するプラットフォームとして運営され、ユーザーにも定着しつつあることから、代替を検討する要件は整っているといえる。
一方、テレビについては、ケーブルテレビなどによる再放送、ブロードバンドによる代替の制度化、そして現在は衛星放送による代替が検討されている。ラジオのような、一般的な”常時”同時配信を代替・補完とするという論点は、これまで構成員の意見としては出されていたものの、具体的な代替案としては提示されてこなかったはずである。先に触れたように、テレビにおいては系列ローカル局の自社制作番組は平均10%程度であり、残りはキー局等が制作した番組や購入番組が放送されている。この点は、ローカル局でも多くの番組を制作し、権利処理をすれば自社の判断で配信が可能なラジオとは大きく異なる。TVerによる同時配信(リアルタイム配信)も、キー局系としてプライムタイムの番組などが一部実施されているのみである。このようにラジオとは大きく異なる事情の中で、民放全体としてテレビの”常時”同時配信をどう考えていくのかについては、10年以上、検討がほぼ足踏み状態にある。
総務省としては当然、以上のようなテレビに関する事情は十分に理解した上で、今回のアンケート調査に臨んだはずである。ただ、報告された事業者コメントを見ると、どんな前提でこの質問に向き合えばいいのか、戸惑いながら回答しているのではないかという印象を持った。筆者も、事務局資料の膨大で多様な事業者コメントをどう読み込めばいいのか、戸惑いを感じた。
テレビについても、ゆくゆくはラジオと同様の考え方で、”常時”同時配信を放送の代替にすることを検討しようとしているのか。その際に、制度化されたブロードバンド代替施策との関係性をどう整理する考えなのか。”常時”同時配信に関するキー局と系列ローカル局の位置づけをどう考えていこうとしているのか。それとも、前提を置かず、幅広に事業者の意向を探ろうとしただけなのか。議論では、構成員から総務省事務局に対してこうした質問があるのではないかと期待していたが、この論点にはあまり時間が割かれず残念であった。
放送の補完・代替としてネット配信をどう位置付けていくのかという論点は、ローカル局云々の話に留まらず、放送制度全体の根幹に関わるものである。次回の2月18日の在り方検では「放送の将来像と制度の在り方に関する論点整理」が行われる予定である。注目してみていきたい。
