メディアを取り巻く環境とコミュニティFMの未来(12月12日)


1)コミュニティFMの閉局が相次いだ2025年

 2025年は、コミュニティ放送局(コミュニティFM)の閉局が相次いだ。数年前から閉局する局は出ていたが、今年はその動きが加速した(図1)。

(図1)

 このうち、たかはぎFMとFMねまらいんは東日本大震災で臨時災害放送局として開設され、その後、地域でコミュニティFMとしてラジオを地域で継続したいということで立ち上がった局であった。2局とも、臨時災害放送局時代から取材で何度か伺ったことがあったので、閉局の知らせは非常に残念であった。

2)ラジオ端末保有率も低下中

 ラジオ端末保有率も減少傾向にある。図2・3は、最新の令和6年度の総務省・通信利用動向調査(出典:統計調査データ:通信利用動向調査メニュー)をもとに筆者が作成したものである。ラジオ端末の保有率は全体で37.7%。5割を超えているのは65歳以上であり、20~39歳の保有率は1割前後となっている。

(図2)

(図3)

3)ポッドキャスト動向 

 しかし、39歳以下の世代が音声コンテンツに接していないか、といえばそうでもない。図4・5はポッドキャストに関する、オトナルと朝日新聞による調査結果である(出典:[2025.2]PODCAST REPORT IN JAPAN 第5回ポッドキャスト国内利用実態調査)。利用者は17%にとどまるものの、10代後半では3分の1が利用。ユーザーも39歳以下が5割を超えている。

(図4)

(図5)

 日本に比べてラジオが非常によく聞かれているアメリカでは、音声コンテンツとしてのポットキャスト市場が活況を呈しており、広告の伸長も著しい(出典:PwC | IAB U.S. Podcast Advertising Revenue Study /2024・図6)。

(図6)

4)ポッドキャストの可能性

 地上ラジオ局のプラットフォームとして今年15周年を迎えたradiko社が、いま最も力を入れて取り組んでいる機能の1つがポッドキャストである。

radikoアプリでポッドキャストを聴こう!【radiko使い方ガイド】 | 無料のアプリでラジオを聴こう! | radiko news(ラジコニュース)

 2024年2月にサービスがリリースされたが、番組数もどんどん充実し、存在感も増してきている(出典:5.6と同様・図7)。

(図7)

 radikoはこれまで、リアルタイム(サイマル)配信の無料広告モデルと、エリアフリー・タイムフリーの有料(サブスク)モデルの2本立てのビジネスモデルできたが、16年目以降のradikoの進化は、ポッドキャストサービスを3本目の柱にできるかにかかっているといっても過言ではないだろう。これまでラジオから距離が遠かった若年層の獲得とユーザーデータの活用、そして何より地上ラジオ局が制作するコンテンツの安心感で、音声広告市場の新たな地平を切り開くことができるか。更なる挑戦に期待したい。

 では、コミュニティFMはどうだろうか。実は、コミュニティFM業界のインターネット配信への取り組みは、地上ラジオ局のradikoよりも早かった。2008年には「Community SimulRadio Alliance(CSRA、コミュニティ・サイマルラジオ・アライアンス)」が結成され、19局のリアルタイム配信が開始された。その後、多くの局でリアルタイム配信が実施され、全国から無料で聴くことが可能となっている。ただ、そのサービスは現在、複数のプラットフォームにまたがっており(出典:総務省・デジタル時代における放送制度の在り方に関する検討会・第39回JCBA日本コミュニティ放送協会報告・図8)、ユーザーから見るとワンストップになっていないところは大きな課題であるといえよう。

(図8)

 聞き逃しサービスやポットキャストについては、一部の局がSpotifyやApple Podcastsなどを通じて取り組んできたが、業界でのサービスは存在していなかった。こうした中、12月4日、「shelfs」という聞き逃しサービスが開始した(アプリのダウンロードは→shelfs)。このサービスの企画は群馬県のFM桐生、システム運用は、FM++などコミュニティFMのリアルタイム配信サービスのシステム運用を担っているスマートエンジニアリングが行っている。図9・10はFM桐生による説明資料である。「地域の実践知を体系的に残す」「声を循環させる社会インフラ」という言葉からも、単なるラジオのあと聞き、ポッドキャストサービスサービスとは異なる、コミュニティFMというメディア特性ならではのコンセプトが示されている。

(図9)

(図10)

 まだスタートしたばかりで参加局も番組(コンテンツ)も少ないが、これまでリアルタイム配信しかなかったコミュニティFM業界のポッドキャストのプラットフォームとして、サービスの充実に期待したい。

5)コミュニティFMは「災害情報のプロフェッショナル」に進化が必要

 1992年以降、30余年にわたるコミュニティFMの歴史を振り返ると、阪神・淡路大震災以降、災害が発生するたびに地域で安心安全を担うメディアとして期待され、開局されてきたことがよく分かる(図11)。

(図11)

 しかし、ここ数年、地域の災害情報伝達を期待されてきた局であっても、閉局が相次いでいることも事実である。閉局の引き金となっているのが、自治体からの広報予算・防災対策予算の削減・打ち切りであるという事例も少なくない。コミュニティFM事業者には、自治体からの予算に依存しすぎない経営の多角化や事業モデルの転換が求められている。

 経営の多角化や事業モデルの転換は、コミュニティFMのみならず、地域メディア事業者全般につきつけられている課題である。ただ、県域民放のような事業規模や、ケーブルテレビのような通信インフラを持たないコミュニティFM事業者ならではの、放送以外に手がけられる事業とは何だろうか。

 まだまだ地域を回って話を伺っていかなければならないのだが、いま1ついえるとすれば、コミュニティFM事業者は、地域のラジオ事業者から災害情報のプロフェッショナルとしての存在に進化していくということではないかと思う。

 ラジオ端末保有率が5割を切り、LINEをはじめとするSNSなどでの情報伝達手段が拡大する中、災害時の情報伝達手段としてラジオを最優先に考えるという自治体の意識が変化してくるのは理解できなくはない。大規模災害でなければ通信障害も短期間で済み、大規模災害であっても、スターリンクのような衛星通信も充実してきている。しかし、南海トラフ地震や首都直下地震、そして、現在も後発地震注意情報が発令されている千島海溝・日本海溝沿いの巨大地震が発生した場合には、やはり地域での情報入手はラジオでしかできないという事態になるのではないかと筆者は考えている。

 ただ、そのことをラジオ事業者として自治体に訴えたとしても、できるだけ財政負担を軽減したいとか、インターネットで万全だという意識になってしまっている職員の気持ちを動かすことは難しいだろう。だからこそ、コミュニティFM事業者は、ラジオ事業者としてではなく、災害情報のプロフェッショナルとして、相対的にラジオの価値を語れる存在にならなければならないというのが筆者の考えである(図12)。

(図12)

 コミュニティFMの人達と話をすると、災害時における使命感の強さと、地域に対する熱量の高さにいつも驚かされる。12月12日は、JCBA日本コミュニティ協会の九州・四国・中国地区の合同研修会に参加させてもらったのだが、災害時には送信所に3日3晩泊まり込んで放送を出し続けた、とか、災害時にすぐに対応できるようスタジオのある役所のすぐそばに自宅を構えた、という話が当たり前のように飛び出してくる。ワークライフバランスということを考え出すと、色々と思うところもあるのだが、それはさておき、この使命感と熱量を持続可能な局の経営に生かしていくためにも、是非、災害情報のプロフェッショナルへの進化を期待したい。そのためには、身につけておかなければならない知識も、他業種との協業も多くあるだろう。防災関連のテクノロジーの進化のスピードも速い。私も業界と共に、できる限りのことをやっていきたいと思う。