9月1日の「防災の日」、熊本県でNHK、民放、コミュニティ放送局で同時生放送された「防災・命のラジオ」という番組に出演してきました。この番組は、阪神・淡路大震災をきっかけに始まった取り組みで、今年で29回目とのこと。

https://www3.nhk.or.jp/lnews/kumamoto/20250901/5000026401.html
今年は、「その時なにができる?ラジオの力、そして未来」がテーマでした。
熊本地震から9年が経ちましたが、その時にどんな放送をし、どんなことを心がけたのか。熊本シティエフエムのパーソナリティ、政木ゆかさんは「深夜の時間帯は特に、不安な夜を過ごす方々の「心に寄り添う」放送を、と、ずっと語りかけていました。ラジオが少しでも安らぎを提供する〝心のおふとん〟になれば、と思っていました」とのこと。実は、私は地震直後にシティエフエムに取材に伺ったことがあったのですが、4000通を超えるリスナーからのメールやFAXが寄せられていて、とても驚いた記憶があります。今回、久しぶりに放送の前の日に打ち合わせでシティエフエムにお伺いしましたが、当時のメールやFAXはそのまま残しているということで見せていただきました。

ラジオは、スタジオからパーソナリティが情報を伝えるだけでなく、リスナーからも身近な情報がたくさん届きます。その情報が誰かを助け、誰かのためになり、励ましあうコミュニティを形成する。それは、阪神・淡路大震災の時に奮闘したAM神戸(ラジオ関西)の取り組みを取材した時にも伺いました。ある診療所の医師が、人工透析患者のために必要な水が入手できない、という投稿をしたら、水があるので届けます、と、リスナーたちが反応し、透析患者が助かったとのこと。私は、リスナーによる「命のリレー」だとその時に思いました。
エフエム熊本(FMK)からはDJのかなぶんやさんが出演。ぶんやさんが担当する夜のワイド番組「FMK RADIO BUSTERS」は、地震発生後、週明けの18日(月)から通常編成を行ったという。FMKのレコード室は地震で使えなくなっていたため、私物を掘り起こしていたら、「CDが俺をかけてくれ、と言っていたのでそれを選んでかけた」とぶんやさん。最初にかけた曲はブルーハーツの「ひとにやさしく」でした。
RKKラジオからは、アナウンサーで気象予報士でもある坂本くるみさんが出演。RKKでは去年12月、熊本市動植物園の駐車場で車中泊体験イベントの会場から、「車中泊やってます」と題してキャンピングカーの中から公開生放送した様子が紹介されました。坂本さんは熊本地震の時に大学4年生で、実際に車中泊も経験されたとのこと。いま増えている電気自動車では、技術的な問題からAM放送が聞けなくなっていますが、アメリカでは、車にAMチューナーを搭載する法案が検討されています。日本でもそうした議論が進んでいくといいと思います。
私はNHK熊本放送局の石井隆広アナウンサーと共に、災害時のラジオの役割について話しました。同じ内容は、夕方の情報番組「クマロク」の中で解説もしました。
Q)災害時のラジオの強みは?
1)スマートフォンに比べて電池切れの心配がない。
ラジオの種類にもよるが、聞き続けてもアルカリ電池なら2日くらいもつ。
2)通信はアクセスが集中すると、機器の処理能力を超えてしまい
電話もネットも、使いづらくなったり、使えなくなったりする。
放送は一斉に情報を届ける仕組み。多くの人がラジオを聴いても大丈夫
放送といえばテレビもそうだが、停電では見ることができず持ち運びも無理
Q)東日本大震災、胆振東部地震でもラジオが活躍?
●東日本大震災、電話には復旧1か月半。
停電は1週間程度で回復したが、被害が大きかった所では1か月以上の所も
・3週間目に宮城県女川町、南三陸町へ。皆、ラジオを頼りにしていた。
・コミュニティ放送局がない地域では、自治体が臨時のラジオ局立ち上げた。(臨時災害放送局<新設型>)
●胆振東部地震が起きたのは明け方の3時。全道が「ブラックアウト」に
・停電でテレビは見られず、電話もつながらず、ネットや電話も使用困難に。
・NHKが地震後、北海道在住の約3000人対象に行ったネット調査では、
地震当日に最も役にたったのは、NHKラジオ、2位が民放ラジオとコミュニテ ィ放送局。3位はテレビだったが、3倍以上の差だった。(https://www.nhk.or.jp/bunken/research/domestic/20190201_10.html)
Q)偽の情報、誤った情報にまどわされないようにするには?
●災害時は、不安を抱え、情報も不足。誤った情報、偽の情報が広がりやすい。
・悪意ではなく善意であっても不確かな情報の拡散は被災地の混乱を招くことも
・広がりやすい誤情報、偽情報への理解を。
●発災直後は「再び地震が来る」との偽の予知や、偽の救助要請や被害報告。
ネットやSNSは、閲覧数を稼ぐことが金儲けにつながる仕組み。不安な心理を 狙った悪質な内容に注意
●避難後の応急期は、どこで●●が足りない、●●が手に入るなど。
正しい情報も、情報が広がりすぎると避難所に人や物資が殺到して混乱も。不特定多数への拡散は慎重に。必要な人に対して情報を共有することが大事。
●復旧・復興期は、「●●病院で診察してもらえない」「避難所を追い出される」「離れたら仮設住宅に入れない」など、将来への不安から行政への批判が集中。情報の裏どり取材しているメディアからの情報の入手を。
Q)偽の情報、誤った情報に対してメディアは何を?
●悪質なもの、混乱が生じる緊急性の高いものは、メディアが連携して、打ち消しを一斉に対応
●被災地の狭いエリアでデマは広がりやすい。口コミで一気に広がる。その時に地域のラジオが活躍。
●2015年、鬼怒川の堤防が氾濫した関東・東北豪雨。茨城県常総市の臨時災害放送局を取材中、「市で最も大きな避難所が閉鎖になる」という根拠のない情報が出回っていた。防災行政無線は使えず、市職員が「一斉にラジオで伝えて欲しい」という現場に遭遇。ラジオの意義を実感した。
Q)ラジオには限界もある。どうすればいいか?
●放送局の伝え手は、丁寧にゆっくり、リスナーがメモがとれるように。特に、更新された情報については明確に伝えること。
●リスナー側は、聞き逃したり、耳で聞くだけだとうろ覚えの情報になってしまう。それを防ぐ環境作りを。同じ放送を複数人が聞く、メモを取る、電池で動く録音機器(ICレコーダー)で録音するなども。
●放送スケジュールが分かれば貼り出しておいて聞き逃しを防ぐことも。
Q)ラジオのおすすめ機能は?
●電池式ラジオ、アルカリ電池の予備を多めに準備。ポケットラジオは単4が多いが、救援物資として届きやすい単3で動くものもいい。手回しや太陽光での充電式もおすすめ。
●ラジオだけはちょっと、という人向けには、懐中電灯、時計、充電機能がある一体型がおすすめ。
NHK熊本放送局「クマロク」(NHKプラスで ~9月7日まで)
https://plus.nhk.jp/watch/st/430_g1_2025090140553
「防災・命のラジオ」(radikoプレミアムで)
https://radiko.jp/share/?sid=RKK&t=20250901121000
帰りに、熊本地震の時に被害が大きかった益城町にも立ち寄りました。地震後の区画整理による道路工事などが9年経った今も続いていて少し驚きましたが、人口は地震発生当時よりも増え続けているそうです。地震当時にお世話になった役場の職員や、町に移住してまちづくりを担う若夫婦に、未来の益城町についてのお話を伺い、改めてまた訪問することを約束しました。
