BS4Kはどこに向かうのか? 4K・8K政策を振り返る①

●民放5局、BS4K放送撤退?

 9月8日、共同通信は「【独自】民放5局、BS4K放送撤退へ 27年に、赤字続きで」と報じ[i]、この記事は配信先の産経新聞や地方紙各紙に掲載された。日本経済新聞も「BSの4K放送、民放各社が撤退検討 負担重く配信にシフト」と報じた[ii]。これらの報道は、同日(9月8日)午後に総務省で開催された「デジタル時代における放送制度の在り方に関する検討会」の「衛星放送ワーキンググループ(以下、WG)[iii]」において、TBSホールディングス(以下、TBS )が、BS4K放送(以下、BS4K)に関する厳しい経営状況を報告[iv]した直後であったこともあり、大きな話題を呼んだ。

●報告されたBS4K放送の厳しい実態

 WGでのTBSの報告によれば、2018年12月にBS4Kを開始した当初から収支は厳しく、累計でも大きな赤字になっているという。2024年度は、事業費用が約8.6億円だったのに対し、事業収入は約1200万円だった。

TBSが資料として示したTVS REGZA視聴データ(2025年7月月間のライブ視聴1分リーチ率)[v](図1)を見ると、BS-TBS4K は、TBS(地上波)の約4%、BS-TBS(2K)の約15%と、リーチ力は極めて低い。また、他の民放4局のBS4Kも、TBSとほぼ同じ視聴状況であることがうかがえる。

(図1)TBSホールディングス WG報告資料①

議論では、有識者の奥律哉構成員から、“4Kでしか見られないコンテンツがあり、そこに特別の広告枠はあるのか”との質問があった。それに対してTBSは、ピュア4K比率は年間14%強程度であること、高精細を売りにCMをセールスしたがなかなか振るわなかったこと、現在は多くの時間はBS2Kをアップコンバート機能で4K相当の画質にして放送しており、BS2Kとほぼ同じCMが放送されていることなどを回答した。

また、TBSは直面する経営判断として、放送する番組やCMなどの素材を集約し、送信所や系列局に送る主調整室(以下、マスター)の更新が2030年に必要であり、今年度には方針を決定しなければならないと述べた。現行のマスター費用は約15億円であり、今回更新するとなると、それ以上の費用がかかることが想定されるという。

(図2)TBSホールディングス WG報告資料②

TBSは、BS4Kに関する様々な課題(図2)だけでなく、4K配信についても触れた。4K配信は、放送事業者だけでなく、ユーザーにとっても4Kコンテンツとの接触機会を増加させるなどの価値を生み出せる可能性があるという内容であった(図3)

(図3)TBSホールディングス WG報告資料③

こうしたTBSの報告を受け、有識者の林秀弥構成員からは、“頭の体操として(BS4K)の撤退戦も視野に入れて議論すべきではないか”といった発言もあった。

 次回のWGは9月24日に予定されている。冒頭に触れた共同通信などの報道後、総務省やTBSが報道内容を否定するようなコメントを掲載した媒体もある[vi]。今後、どのような議論の運びになっていくのか、今後の動静を注目していきたい。

●放送政策としての4K・8Kを振り返る

 筆者はNHK在職中の2012年から、放送政策議論をウオッチし、議論や業界の動向をせき止める論考を執筆してきた[vii]。2012年といえば、消費者向けの4K対応テレビが、国内で本格的に発売開始された年である[viii]。また、地上デジタル放送に完全移行した後の放送の未来像を考える「放送サービスの高度化に関する検討会(以下、高度化検討会)[ix]」が開始された年でもあった。

 あれから13年が過ぎた。2025年7月時点で、4Kテレビののべ出荷台数は2352万台[x]。テレビ市場全体に占める4Kの台数構成比は半数を超えている[xi]。筆者は、節目、節目でA-PAB((財)放送サービス高度化推進協会)やJEITA((社)電子情報技術産業協会)から発表されるこうした数字に注目し、4Kコンテンツの視聴可能世帯が順調に拡大していることは確認していた。しかし、恥ずかしながら、衛星放送の未来像に対する関心は次第に薄れてしまっていた。2015年位から有料VOD、見逃し配信、同時配信などの動向が加速し、ネット時代における放送のあり方を考えることが増えていったためである。

今回のTBSの報告によって、4Kコンテンツを制作・提供する民放BS局が、放送開始当初から現在まで、ついぞビジネスモデルを確立することできなかったという事実が明らかとなった。この報告は、今後、放送政策として衛星放送の将来をデザインしていく上で、ターニングポイントとなるだろう。

また、今回は議論の俎上に載っていないが、一般家庭ではほとんど視聴されていない、4K放送より更に高画質・高精細な8K放送[xii]を受信料で推進してきたNHKの姿勢や、BS4K以上に視聴者を集めることが困難なままにサービスを終えた新たな周波数帯域のBS・CS左旋政策についても、きちんと検証すべきだと考える。これは衛星放送政策に限らず放送政策全般にいえることであるが、過去の政策を検証しないまま、次の政策へと議論を進めてしまうことがあまりに多いと感じる。テクノロジーの進化や視聴者動向の変化が激しいと言ってしまえばそれまでであるが、反省なくして進歩なし、検証なくして未来なし、ではないだろうか。もちろん、政策議論に伴走してきた筆者としても忸怩たる思いがある。

 4Kに関して、検討開始当時どのような未来像が描かれていたのか。事業者はどのような考えを持っていたのか。事業採算性はどのくらい見込めていたのか。現在行われている総務省の衛星放送WGでも、これまでの経緯と事実関係は説明されている。しかし本稿では、当時、筆者が取材して感じていた業界の空気感なども含めて、執筆した論考を引用する形で検証してみたい。

 今回は第1弾として、検討が開始された2012年から、基幹放送による4K8K衛星放送(新4K8K衛星放送)の方向性が定まった2016年までの動向を見ていく。

①国の成長戦略と位置づけ、オールジャパンで推進 (2012年~2013年) 

 2012年11月に立ち上がった高度化検討会の論点は大きく2点あった。1点目が、今回のテーマであるテレビの高画質化、高精細化。もう1つが、テレビがインターネットに接続することで多様な双方向機能を実現させていく、テレビのスマート化である。現在はコネクテッドテレビ(CTV)という名称が一般的だが、当時はスマートテレビと呼ばれていた。この2つの高度化が相まって進んでいくことで、デジタルテレビの魅力を拡大させ、視聴者に価値を提供していく、こうした未来像が議論のベースにあった。

いずれもオールジャパンで進めていくことになるのだが、本稿で主に扱うのは、前者の高画質化、高精細化である。後者は別途、書く機会を設けたい。

 筆者は2012年11月に開催された高度化検討会の1回目を傍聴した印象を以下のように記している。

「高度化検討会の第1回では、「4Kと8Kがほぼ時を同じくしてサービスとして出てくる可能性もある」「コンテンツの政策に関してはいっそ最初から8Kで」など、日本以外で開発が行われていない8Kに対し、いささか前のめりとも感じられるほど、期待が込められた発言が相次いだ[xiii]」。

議論の中心は4Kよりも8Kであったことを強く記憶している。8Kに積極的だったのは、2000年から放送技術研究所で開発を進めてきたNHKである。NHKは「8Kスーパーハイビジョン」と名付け、日本発の“究極のテレビ”で、国際社会における映像文化発展をけん引していきたい、という強い思いを抱いていた。

(図4) 2K・4K・8K(総務省のサイトから)

一方、テレビメーカーは2013年のCES(毎年1月にアメリカのラスベガスで行われている世界最大規模のテクノロジー見本市)[xiv]に参加し、グローバル市場のトレンドは4Kテレビであることを強く認識した。そのため、高度化検討会は、4Kと8Kを一体として日本の成長戦略と位置づけ、オールジャパンで推進していく、という方向に向かっていく。

2013回年2月の2回目の高度化検討会の様子を、筆者はこのように記している。

 「第2回では、ある構成員から、「4Kは8Kまでのリリーフであり、登板を急がなければ海外のプレーヤーがマーケットを先取りして手遅れになる。収益になるか見定めてからという段階ではない」と、4Kの実施が遅れることに対する強い危機感が示された。こうした議論を踏まえて提案されたのが、試験放送スタートの時期を、4Kは当初予定の16年から14年に、8Kは20年から16年にそれぞれ前倒ししたロードマップであった。これについて構成員からは、「非常にアグレッシブ」「かなりきつい」「奇跡を起こすイメージ」との発言も次々となされたが、やるしかない、やればできるはず、という空気が検討会を漂っていた[xv]」。

同年6月に公表された高度化検討会のとりまとめ[xvi]では、4K/8Kの周波数として、①124/128度CS、②ケーブルテレビ・IPTV、③BS右旋、④東経110度CS左旋という4つの候補が示された。④の左旋は、これまで使っていなかった新しい帯域であり、視聴するには、アンテナ、テレビ、宅内配線など受信環境の整備が必要である。④の候補が示されたのは、8K放送を行うためには、4Kの3倍という広い帯域幅が必要だからであった。

そして、4K/8Kを放送局、メーカー、通信事業者などオールジャパンで推進する組織として「次世代放送推進フォーラム(NexTV-F)」が立ち上がり、国のテストベッド事業を受託し、技術仕様やコンテンツ制作が開始された。

そんな中、4K/8K熱が更に高まる出来事が起きた。

「9月8日、2020年のオリンピック・パラリンピックの開催都市に東京が決定した。(中略)2日後の10日には、新藤義孝総務大臣が会見で、オリンピック招致も見据えて4K/8Kのプロジェクトを前倒しして目標設定してきたが、この動きに拍車がかかってくるだろう、と述べた。そしてその後、この大臣会見に呼応するかのように、テレビはオリンピックと共に進化してきたというテレビ史の断面が各所で紹介されるようになった[xvii]

 こうした動きに対して、当時の筆者は懐疑的であった。なぜなら、4K/8K推進のオールジャパンの動きの傍らで、メーカーや放送局は、インターネットの双方向機能やユーザーデータを活用した新たなサービスを独自に展開し始めていたからである。そのことについて記載したのが下記である。

 「これまでテレビは長らく、ある程度、統一的なルールに基づき、電源を入れれば放送局が作った番組が一画面に映し出される、シンプルな家電として存在してきた。しかし、いま提供され始めているサービスは、事業者ごとにテレビを独自の形で活用していこうという取り組みであり、それに伴う視聴者の囲い込みともいえる状況も始まっている。(中略)これからのテレビは、太い幹のように大きな方向性を持った技術やサービスがオリンピックのような国家的な大イベントに合わせて開発され、それによって視聴者全体の需要が掘り起こされてきたというこれまでのテレビ史をひもとくだけでは、到底、予測できない複雑な道筋をたどっていくと思われる。そのため、オールジャパンの動向を見据えつつも、それに収まらない多様な取り組みについても同時に把握し続け、そのいずれの取り組みが真に視聴者の心を掴むことになるのか、そのことは日本社会にとってどのような意味を持つのか見極めていく必要がある[xviii]」。

②試験放送は開始されるも課題が噴出 (2014年)

 2014年、4K試験放送が開始された。当時の記載からは、総務省や関係者が“世界一”にこだわっていることがうかがえて興味深い。

「6月2日、2014年FIFAワールドカップ開催に合わせる形で、日本初の4K試験放送「Channel 4K」がスタートした。諸外国では、欧州を拠点とする衛星運営事業者が2013年9月から試験放送をスタートさせ、韓国では2014年4月にケーブルテレビが専用チャンネルを開局している。しかし、総務省始め関係者は、一般家庭のテレビで4K放送が見られる環境を整備したという意味では、日本が世界初であると力説している。7月末現在、全国200か所近くの家電量販店などに4Kテレビ視聴コーナーが設けられている。「Channel 4K」のパンフレットには、「あなたは、『本当はこうだったんだ』と思う。」というキャッチコピーが躍る[xix]」。

 華々しく試験放送が始まる一方で、4Kと8Kを一体として普及させていくという方向性の議論には課題も少なくなかった。1つは、どの帯域で両サービスを提供していくか、というチャンネルプランである。また、8Kに関しては、対応テレビが出来たとしても、価格は高額でサイズも大きく、一般家庭に普及させることにはそもそも最初から無理があった。加えて、4Kコンテンツの制作を開始した民放キー局からは、コストと時間がかかるといった消極的な発言も目立ち始めた。

 「(4K・8Kロードマップに関するフォローアップ)会合では、まず地上波民放事業者から、4Kコンテンツの制作がいかに困難か、課題が次々と報告された。「まだ一層の奇跡的な努力とブレークスルーが必要」というのがコンテンツ制作に対する事業者達の概ねの認識であった。また伝送路については、「チャンネルプランがどうなって、どう我々が関わっていいのかが見えない」「何が4Kで何が8Kなのか。4Kをどこまで進め、どの時点で8Kにするのか」と疑問の声が相次いだ[xx]」。

③4Kはオールジャパンで推進しているが「国策ではない」 (2015年)

2015年、NHKや在京キー局などの基幹放送に先行する形で4K実用放送を開始したのが、124/128度CS(スカパー!プレミアムサービス)、ケーブルテレビ、ひかりTVであった。中でもケーブルテレビは、同年「ケーブル4K(現在はsatonoka 4K[xxi])」というチャンネルを立ち上げて番組制作に取り組むと共に、ケーブルテレビ契約世帯が4Kを視聴するための対応STB(セットトップボックス)の普及も促進し、4K放送のけん引役となっていった。

 そして同年、ようやく基幹放送のチャンネルプランの方向性が示されることになる。帯域を多く活用する8KはBS左旋を活用することが適当とされた。一方で、4Kについては、視聴者が受信のため追加の環境設備を必要としないBS右旋で、より多くのチャンネルが視聴できるよう、帯域の一部を“幅寄せ”することとなった。それによって、ちょうど6局分の放送が可能になるため、NHK+在京キー5局の参入が前提となるのでは、という空気が放送業界内に広がっていった。その様子を表しているのが下記の記載である。

 「7月の会合では、在京民放キー5局から口々に、実用放送の事業性に対する懸念や不安の声が上がった。しかしこの声は、4K・8Kの検討が開始された2012年の「放送サービスの高度化に関する検討会」の開催当初から変わっておらず、そうした意味で5局は一貫した姿勢で臨んでいると言っていいだろう。その後、10月に行われたCEATECの基調講演において総務省の吉田眞人大臣官房審議官は、4K化は「地デジと同じ意味での国策ではない(中略)採算性からできないという事業者に対して、国の施策だから参入してほしいと言うつもりはない」と5局に対するメッセージとも取れる発言を行った[xxii]

 在京キー5局がBS4Kに対して前向きになりにくかったのは、事業の採算性だけではなかったと推察する。5局が決断を迫られた2015年は、本格的な配信サービス時代の幕開けだったからだ。

  「この1年、視聴者にとってみれば有料多チャンネル事業者のVODサービスや実用放送に加えて、「Netflix」や「Amazonプライム・ビデオ」、「dTV」などのS-VODサービスの4K対応が相次ぎ、4Kコンテンツを楽しみたいと思えばそれが簡単に実現できる環境は整いつつあるといえる。(中略)かつて在京民放が5局揃ってBSに進出した頃には、番組を視聴者に提供する方法は放送波が絶対的位置を占めていた。もちろん今も放送波がメインストリームであることには変わりないが、伝送路には通信もあれば、サービスには配信も外部プラットフォームへの提供もあるというように、選択肢が増えてきていることは事実である。今後、コンテンツの4K化が進んでいくことは間違いないが、高い利用料を支払って、チャンネルを埋めるだけの4K番組を制作するビジネスの目途が立たなければ放送参入はリスクでしかない。(中略)4Kの推進は“オールジャパンではあるが国策ではない”のだから、各社の経営判断が優先するのである。長期間にわたり各局が互いに様子見を続けてきた状況からはそろそろ脱する時期が近づいている[xxiii]」。

 もう1つ、当時、筆者は別な視点も提示していた。

 在京キー5局の、ある種のいらだちともみえなくもない一連の姿勢の背景には、今後も2K放送を行い続ける地上波放送の4K化についての長期的ビジョンが総務省から示されていないことが大きいと思われる。先の中間報告(4K・8Kロードマップに関するフォローアップ会合)には「将来的には、視聴者のニーズに応じた2Kからより高精細・高機能な放送サービスへの移行(マイグレーション)について議論をしていくことが必要との考え方もある」との記載がなされていたが、この文章の主語は誰なのか。(中略)民間事業者に短期的な経営判断を迫るのであれば、長期的なビジョンを指し示すのは行政の責任であろう[xxiii]

④在京キー5局はBS右旋での免許申請。左旋への免許申請も (2016年)

 “オールジャパンではあるが国策ではない”という状況だったが、結局、民放キー局は5局とも、BS右旋で免許を申請した。また、「基幹放送普及計画」では、4K・8K放送の伝送路の基本は受信環境整備が必要な左旋の使用となったが、BS左旋にNHK(8K)と民間4局、CS左旋にはスカパー・エンターテイメントが免許を申請した。この状況を受けた記載が下記である。

 「4K・8Kを放送サービス高度化の柱としてオールジャパンで推進していくと決定した2013年から3年、「新たな投資ばかりでビジネスモデルが成り立たない」「わざわざ放送波で伝送しなくても通信で十分ではないか」等の消極的な意見が事業者間で交わされてきたが、結果として(NHKを除き民間)放送事業者9社、プラットフォーム事業者1社の計10社が名乗りを上げたというのは、大きな出来事であると言っていいだろう。[xxiv]

こうして開始した基幹放送の4K・8K衛星実用放送の当初のチャンネルが5である。このうち現在は、BS左旋はNHK8Kのみが放送中である。SCサテライト放送(ショップチャンネル4K)とQVCサテライト(4KQVC)はBS右旋に移動、WOWOWと東北新社メディアサービスは放送を終了し、新たにOCOTV[xxv]が開局準備中だ。CS左旋のスカパー・エンターテイメントの8チャンネルは放送を終了している。

(図5)2018年12月開始「新4K8K衛星放送」チャンネル一覧

●今後の議論に向けて

 放送の世界は戦後の“護送船団方式”をいまだに引きずっている、との批判がよくある。総務省による監視・監督の元で放送局の経営を保護してきた理由は、放送メディアが国民・視聴者の知る権利に奉仕し、民主主義を支えることを制度的に担う存在であることの裏返しである。そうした意味でいえば、地上放送のデジタル化は、放送の歴史において最も強固な“護送船団方式”による政策であった。しかし、今回取り上げた4K・8K放送は、“日本の成長戦略をオールジャパンで推進する”政策として位置付けられていたかもしれないが、あくまでリッチなサービスを楽しみたいという視聴者に対する“モアサービス”であり、あまねく国民、視聴者に対する“ユニバーサルサービス”ではなかった。

 筆者の当時の記載を見る限り、在京民放キー各社は当初から、事業継続性について疑問や強い懸念を出し続けていた。にもかかわらず、キー局が5局揃ってBS4Kの開局という判断を下したのは、テレビの価値を高めたいという純粋な思いの他に、総務省と業界で形成されてきた“放送村社会”の空気を乱さないという“あ・うん”の呼吸があったこと、国の成長戦略やオールジャパンという掛け声の中で、社会的影響力のあるキー局として取り組みから離脱する勇気が持てなかったこと、地上4Kの道筋が見えない中、何らかの4K化へのアプローチは必要だと感じていたこと、などを総合的に判断した結果ではないかと推察する。ただ、高画質・高精細だけで視聴者の衆目を集めることは難しく無料広告ビジネスは成り立たない、これからの4Kサービスは身軽に展開できる配信が主流になっていく、といったことは、多くの事業者が開局する前から既に認識していたのではないか。そう考えると、今回の衛星放送WGでTBSが報告した、“4Kコンテンツを制作・提供する民放BS局が、放送開始当初から現在まで、ついぞビジネスモデルを確立することできなかったという事実”は、決して予見できなかった未来ではなかったともいえよう。

 ただ、この事実を単に民間企業の経営判断と突き放すことはできない。放送政策には問題はなかったのか。そして、今後、放送政策としてとるべき施策とは何か。今回の総務省のWGでは論点となっていない、8K放送や左旋の政策についても幅を広げて、次回書いていきたい。

 

 


[i] https://www.47news.jp/13126799.html 

[ii]https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC06A4E0W5A800C2000000/?msockid=13b309409083612d1c6c1cef91876045 

[iii]https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/kenkyu/digital_hososeido/eiseihosoWG_15th.html 

[iv] https://www.soumu.go.jp/main_content/001029532.pdf 

[v] 同上 P6

[vi] https://www.phileweb.com/news/d-av/202509/09/63427.html 

[vii] https://bushwarbler.jp/housousyourai/

 「これからのテレビを巡る動向を整理する」「これからの放送はどこに向かうのか」

[viii] 2011年に東芝が発売し、2012年には主要メーカー4社による発売が開始された

[ix] https://www.soumu.go.jp/menu_seisaku/ictseisaku/housouservicekoudoka/index.html 

[x] https://www.apab.or.jp/4k-8k/device-number/ 

[xi] https://www.jeita.or.jp/japanese/stat/shipment/2025/index2.htm

[xii] 4Kと8Kの違いについてのNHKによる説明→https://www.nhk.or.jp/bs/feature/   

[xiii] https://www.nhk.or.jp/bunken/summary/research/report/2014_09/20140902.pdf P30

[xiv] https://www.ces.tech/

[xv] 注)13

[xvi] https://www.soumu.go.jp/menu_news/s-news/01ryutsu12_02000044.html 

[xvii]https://www.nhk.or.jp/bunken/d/_data/research/domestic/BUNA0000010630120003/files/20131203.pdf P34

[xviii] https://www.nhk.or.jp/bunken/summary/research/report/2013_12/20131203.pdf P35-36

[xix] https://www.nhk.or.jp/bunken/summary/research/report/2014_09/20140902.pdf P18

[xx] https://www.nhk.or.jp/bunken/summary/research/report/2014_09/20140902.pdf P31

[xxi] https://www.satonoka.jp/ 

[xxii] https://www.nhk.or.jp/bunken/research/domestic/pdf/20160201_5.pdf P37

[xxiii] 同上 P38

[xxiv] https://www.nhk.or.jp/bunken/research/domestic/pdf/20161201_8.pdf P2

[xxv] https://www.ocotv.com/