2025年の放送業界の動向を振り返る(12月31日記)


 2025年は、放送100年目の記念すべき年であった。しかし、1月にフジテレビ問題が起きてからは、地上波放送全体が人権意識やガバナンス・コンプライアンスを問われる重苦しい1年となった。私は、フジテレビの企業風土という固有の問題と、地上波放送全体に通底する共通の問題とは切り離して議論すべきだと思いながら一連の議論をウオッチしていたが、視聴者や社会から信頼される事業者として“101年目からの放送”の道を歩むには、より透明性を高めていく企業経営に舵を切る契機と前向きに考えていくべきだろう。

 ただ、この業界は特に、社会から批判を受けたり政治からの指摘を受けると、極端から極端に傾く傾向がある。コンプライアンスへの過度な経営の姿勢が、クリエイティブな番組制作や雇用関係のない出演者との関係性に及ぼす影響については、今後も注意深く見ていく必要があると考えている。

 NHKのネット活用業務の必須業務化に伴って、10月に「NHK ONE」が始動したことも、2025年の大きな動きであった。ネット経由で“放送と同一”の価値を提供し、放送受信端末を保有しない者にも受信料契約の対象を拡大することは、NHKの長年の悲願だった。私は、それと引き換えに、NHKは、ネット上での“公共メディア”に向けた10年にわたる様々な取り組みを、十分な検証なく手放したと受け止めている。そこまでして手に入れた悲願は、今後どこまで実を結ぶのだろうか。

 ただ私は、NHKが任意業務の際に行っていたネットサービスの全てを肯定しているわけではない。日本新聞協会が指摘する民間と競合するようなものや、民放連が指摘するオリジナルコンテンツに近いものも存在したからである。そうした批判はあったものの、約10年間、NHKはデジタル情報空間の中における“公共メディア”の役割とは何かを模索してきたことは事実である。このテーマについては今年もしっかり考えて行きたい。

 以下、私が2025年に重要だと感じた放送・メディアを巡る動きについても示しておく。

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