総務省のウェブサイトに、コミュニティ放送局に関する「見解」を寄稿しました。(3月5日)


総務省のウェブサイトが新しくなり、それぞれの政策別に政策ポータルができたそうです。そのうち、「コミュニティ放送政策ポータルサイト」の中に、有識者として「見解」を寄稿する機会をいただきました。

サイトは下記からアクセスください。コミュニティ放送局の制度概要と共に、寄稿が掲載されています。

総務省|放送政策の推進|コミュニティ放送政策ポータルサイト

下記に、私の「見解」を掲載しておきます。

「コミュニティ放送局の存在意義」 メディア研究者 村上圭子


コミュニティ放送局の制度が誕生して35年が過ぎた。人口減少やメディア環
境変化の中で、多くの既存メディアが苦戦を続けているが、私はコミュニティ放
送局が本領を発揮するのは、むしろこれからではないかと考えている。そう考え
る理由は 、「 包摂」「互助」のメディア特性にある。
コミュニティ放送局はこれまで、地域から災害時の役割を期待されてきた。近
年、インターネットによる多様な伝達手段が揃う中、自治体の関心が薄らいでい
ることは否めない。しかし、災害対応とは本来、最も大きな災害を想定し、最も
大きな被害を受けるおそれのある地域や人々を守ることを第一に考えるべきで
ある。通信インフラの復旧は早くなったとはいえ、工事は人口の多い中心部から
進む。道路アクセスが悪く、高齢者が多く住む山間部や沿岸部は、長期間、孤立
状態に置かれることは避けられない。大災害時、平時には非効率と思えるかもし
れないコミュニティ放送局こそ、最も効率的、いや、唯一、こうした地域や人々
に対して、命に関わる情報を届け続けられる手段なのである。自治体はもっと想
像力を働かせて欲しいと思う。
災害時の物理的な孤立だけでなく、日々の暮らしで人々が感じる心理的な孤
独に向き合っているのも、コミュニティ放送局の大きな特性である。番組では、
地域で生きづらさを感じる人たちや、地域をよくしたいという思いを持つ人た
ちなど、多様な人々の肉声やお便りを届けている。SNSや動画配信サービス上で
誰もが手軽に発信できる時代は、便利だが傷も受けやすい。コミュニティ放送局
には、誰もが安心して番組に参加して、人とつながることができる空間がある。
こうした小さなつながりが連なって、人を排除しないコミュニティとなり、その
先には、対立ではなく対話のあるリアルな地域社会が形成されていく、私はそう
信じている。
もちろん、放送局だからラジオだけやっていればいいというほど甘い時代で
はない。ネットを積極的に活用して、若年層や全国にどうリーチしていくかも考
えなければならないし、放送以外の事業も手がけていかなければならない。私は、
コミュニティ放送局には、災害情報伝達のプロフェッショナルとして自治体と
向き合っていけるだけの力をつけて欲しいと思うし、コミュニティ放送局とい
う名称に負けぬよう、我がまちのプロデューサーとして地域の未来を切り拓く
気概も持って欲しいと思う。そして、当たり前だが最も重要なことは、地域に存
在し続けて欲しいと思ってもらえるかどうかである。そう思ってもらえさえす
れば、住民、企業や団体、自治体など、それぞれが応分に支えあう事業モデルが
成り立つ可能性がある。これが、コミュニティ放送局の最大の魅力であり、マス
メディアとは決定的に違う特性である。
人口減少や高齢化、地域課題の増大、災害の激甚化など、厳しい時代だからこ
そ、コミュニティ放送局には、誰一人取り残さない、誰一人傷つけない地域のた
めにより一層、頑張ってもらいたい。そして、少しでも多くの人たちが、コミュ
ニティ放送局に関心を寄せてくれることを期待している。